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ソフィア総合研究所の考え方

「実業」と「虚業」(その2)


前回は、今年の8月に破綻した東証一部上場の不動産会社「アーバンコーポレイション」と、続いて9月に破綻した米国の証券大手「リーマン・ブラザース」についてお話ししました。「アーバンコーポレイション」のケースは、本業である「マンション建設と販売」という「実業」の中の資金調達の分野で、「虚業」の仕組みを使ったということが破綻の大きな原因であると申し上げました。また、「リーマン・ブラザース」のケースは、もともと本業が金融業なので、その業務の一部に「虚業」の部分が組み込まれていることは当然のことですが、その「虚業」の部分の割合が大きくなり過ぎて、本体を呑み込んでしまっての破綻ということになります。

米国では、さらに、米国保険最大手の「AIG」の経営破綻が予測されるにいたって、米連邦準備制度理事会が、約9兆円の公的資金を投入することを決めたのに続いて、次々と新たな救済策が打ち出されています。第一図

さて、それではまず、金融市場崩壊の切っ掛けとなったと言われている「サブプライム住宅ローン」についてお話しすることにします。

「サブプライム住宅ローン」とは、一言で言えば、信用力が低く、通常はローンが受けられない個人の借り手に対して貸し出される、特殊な仕組みを持ったローンのことです。

具体的には、借り入れを行った当初の2年ないし3年間は固定の低金利が設定されていますが、その優遇期間とでも呼べる期間が終わると、変動金利となり、金利そのものも上昇するという構造を持った住宅ローンのことです。

第一図を見て下さい。縦軸は金額を表し、横軸は年月の経過を表します。最初に借り入れ金額、すなわち元金があり、年月の経過とともに金利が加算され、借り入れ総額が増えていきます。ただし、「サブプライム住宅ローン」の場合は、先述したように、最初の2年ないし3年間は低金利が設定されていますので、図のように当初のカーブは横ばいの形になっています。ところが、その期間が終わると、変動金利が適用されることになり、カーブは急激に立ち上がることとなります。第二図

さて、もともと支払い能力に問題のある借り手に融資したローンですから、当初の低金利の期間が終わり、毎月の返済額が増加した途端に払えなくなる借り手がかなりの確率で発生します。これは、借り手にとっても貸し手にとっても、危機と言える状況です。この危機に対して救いの女神として働くのが、担保となっている住宅の値上がりなのです。

第二図を見て下さい。返済に必要な金額を越えて住宅の価格が上昇しているので、返済不能になった時には、担保となっている住宅を売却して、ローンを清算することができます。さらに、別の「サブプライム住宅ローン」に借り換えを行うことによって、ローンを継続することすらも可能となります。

これが、「サブプライム住宅ローン」産業が留まることを知らない発展をした、一見素晴らしい仕組みの説明です。これによって、これまで自分の家を持てなかった貧困層の人々が、人並みに住宅を手に入れることができ、幸せな人生を送ることができるようになりました。第三図

ところが、この素晴らしい仕組みには、とんでもない落とし穴があります。それは、この仕組みの基盤となっているのが、住宅の価格が上昇を続けるということなのです。一旦住宅価格の上昇が止まれば、この仕組みが即座に破綻することは、第三図を見ていただければ明らかです。

この破綻が現実のものとなったのが、2007年8月9日木曜日のことです。この日、フランス系の BNPパリバという投資会社が、サブプライム関連証券市場の混乱から傘下の3つのファンドの解約を凍結したことに端を発し、全世界を巻き込んだ金融市場の大混乱が始まることになります。その後の各国行政府を巻き込んでの悲惨とまで言える状況については、テレビや新聞による報道で皆様もご存じの通りです。

さて次回は、「サブプライム住宅ローン」が、発祥地の米国だけではなく、世界中の金融市場を破綻の瀬戸際に巻き込むことになったもう一つの仕組み、証券化のマジックについてお話しします。ご期待下さい。