愛知県一宮市教育委員会様は、研修管理システム 「まなびiネット」 を2022年4月より運用されています。
(「まなっぷぱれっと」の原型となるシステムをご利用いただいています。)
一宮市教育センター 西本匡志所長にお話をうかがいました。
1.システム導入前はどのような状況でしたか
これまで一宮市ではメールや電話できた情報を、Excelで作成する台帳で管理していました。情報の登録や変更修正があるたびに、ミスのチェックを行う必要もありました。登録の少ないときはまだ良いのですが、夏季集中研修は、6日間で80程の研修が実施され、延べ2,500人もの参加者があるため、担当者は長い時間を掛けて準備をしていました。
また、このような状況の中、一宮市が中核市に移行することが決定しました。これにより、教員の免許更新に関わる研修受講管理も近い将来担う必要が生じました。その結果、さらなる業務量の増加が見込まれ、職員の負荷が一層高まることが懸念されました。そのため、業務を効率的に進めるための仕組みの必要性がますます高まっていました。
その後、新型コロナウイルスのパンデミックが起き、教育現場における学びの方法が大きく変化しました。さらに、文部科学省によって教員免許更新制度が廃止され、中核市は新たな研修制度への対応が求められることとなりました。こうした様々な環境変化に対応して、一宮市では、教職員の資質向上のための研修を総合的に支援・管理する仕組みを構築することを決定しました。
2.新しい仕組みにはどのような期待をお持ちでしたか
まず重要な課題として、夏季集中研修に関する業務の効率化と省力化がありました。また時代のニーズに対応するために、e-ラーニングでの研修機会を増やしていくことも考えていました。さらに今後は、研修の管理だけではなく、教職員が自分の学びの足跡を振り返りながら、これからの学びに役立てることができる仕組みもあると良いなと考えました。
私たちは、単に研修の出席管理の仕組みに止めず、教職員の成長を支援する、プラットフォームとなる仕組みを実現したいとの期待を抱いていました。
3.システムを導入して2年目となりましたが成果や反響はいかがでしょうか
新しいシステムの導入による効果は、非常に大きかったです。まず重要な課題であった研修実施に関連する業務の在り方が、私たち研修実施機関は大幅に変化しました。
以前はこの業務を行うには専門的なスキルやノウハウが必要であり、業務の進め方や知識が、特定の個人に依存していました。しかしこのシステムは直感的に操作できる仕組みでしたので、誰でもこの業務を行うことができるようになりました。また、システム導入に伴い研修管理業務の手順やルールが統一されたため、作業効率が上がり余力も生まれました。
一宮市では年間250以上の研修を実施しており、その多くは夏季休暇中に集中します。昨年度と今年度の夏季集中研修の準備・管理に新しいシステムを利用しましたが、情報の伝達や、更新管理に関わる手間が大きく改善され、担当者の申込管理にかかる業務量は、およそ2分の1にまで減少しました。夏季研修の受講者管理業務の効率化という目標を達成することができましたし、本来の重要な役割である、研修内容の充実に向けた活動へ、より注力できるようになりました。
また当初はそこまで重要な機能とは思っていなかったのですが、各学校でどんな会議が行われるのかを参照する機能と、センター内の会議室の予約機能が活用されています。この2つの機能を使うことで、一宮市全体の今後の会議・研修の予定が各学校から参照できるようになりましたので、教員の出張が集中する時期や場所を把握でき、校務管理にとても役立っていると聞いています。
現在文部科学省は、新たな研修制度に適応した仕組みの準備を進められていますが、一宮市は前述の様々な要因により2021年度に独自のシステムを構築し、2022年4月より運用しています。文部科学省が提唱されている研修履歴の管理・活用や教員の学びの振返り機能も有しており、管理職と教員の面談にも既に活用しています。今のところ必要にして十分なシステムとなっています。
しかしながら、研修履歴の蓄積は始まったばかりですし、教職員のシステムの習熟度を今以上に上げていく必要はあります。今後も様々な改善を続けていく中で、データの蓄積が進み、教職員の習熟が進むにつれて、私たちの目指す教職員の学びのプラットフォームとしての役割を十分に果たしていけると考えています。